・概 要
・開幕式---蘇光氏挨拶
・報告1---「記念すべき海外進出の第一歩」 喜多見康
・報告2---「「ディジタル新世紀」アジアの時代を迎えて」 川口吾妻
・報告3---「過去と未来が同時進行の街、北京」 松本明彦
・報告4---「北京メモ」 柴田忠男
・提 起---「2001年のディジタル・イメージ」 喜多見康
・「「ディジタル・イメージ2001東京展」は日中韓3国の国際展に」 長田智行

・展示作品リスト
・写真で見る中国展---展示風景・セミナーなど---

●概 要
日時 2000年12月28日〜2001年1月6日

会場 北京市労働人民文化宮東配殿 ソニー博物館

主催 中国人民対外友好協会 ディジタル・イメージ

後援 北京市労働人民文化宮 北京中央美術学院電脳美術工作室 ソニー博物館

協力 在中華人民共和国日本国大使館 日中経済協会北京事務所 中国科学技術協会 digital cosmos 河口洋一郎 勝井三雄 そのほかたくさんの方々

開幕式 2000年12月28日 北京市労働人民文化宮大殿

展示 北京市労働人民文化宮東配殿(静止画111作品)
   東方広場ソニー博物館(静止画20作品、動画14作品)

■北京市労働人民文化宮 参加作家(105名:静止画)
阿部知弘  雨宮由里子  アライ・マサト  荒木慎司  安齋順子  安藤克昌  石川浩二  イシグロマサハル  石原博志  市川祐司  伊東宣哉  岩井宣雄  岩渕泰治  上畠益雄  江川宜宏  エナミケンジ  大賀葉子  大島宏文  大都博之  小笠原たけし  岡部タカノブ  扇原康成  加藤俊明  上口睦人  神谷一郎  川口吾妻  北岡久美子  喜多見康  木村智博  久納ヒロシ  桑島幸男  小泉麻友美  小坂徹  小澤貴也  後藤宏  小松修  齋賀和彦  酒井和男  鷺義勝  柴田敏明  菅原明彦  鈴木明実  鈴木守  成光雄  関谷哲史  高橋里季  竹久マサオ  武田瑛夢  竹田憲司  田中修一郎  田中誠  駄場寛  駄場真弓  筒井海砂  出渕亮一朗  所幸則  富岡聡  中井勝郎  中川悠京  中川佳子  中野ヒロフミ  中林たける  永吉克之  なりた麻美  韮沢薫  橋本聡  羽田宗春  林ノブ  早坂光平  原マサト  HAL_  樋口誠  一入正記  檜山巽  福間晴耕  藤井啓誌/ふじいはるお  古岡ひふみ  外園勉  星沢順子  細井真木  Rey.Hori  町田浩之  松林あつし  松原英二  松原浩司  松本明彦  三海誠二  みさお佐知  南光英  ミヤケシゲル  武藤修  村上佳明  望月澄人  森谷信敏  安井千博  山岸直子  山田ケンジ  山田真屋  山本里士  杠聡  横井由美子  横山弥生  吉田光治  ラジカル鈴木  渡辺秀樹

■北京市労働人民文化宮 特別出品(静止画各3作品)
勝井三雄 河口洋一郎

■ソニー博物館 参加作家(9名:動画)
大場康雄  喜多見康  高橋信雄  富岡聡  森野和馬  山本健介  岡部タカノブ  扇原康成 ドルバッキーヨウコ

■ソニー博物館 参加作家(20名:静止画)
石川浩二  小笠原たけし  岡部タカノブ  久納ヒロシ  小坂徹  小澤貴也  成光雄  田中誠  駄場寛  筒井海砂  所幸則  富岡聡  林ノブ  檜山巽  Rey.Hori  町田浩之  村上佳明  山本里士  横山弥生  ラジカル鈴木

■搬入展示参加者
長田智行 柴田忠男 川口吾妻 喜多見康 松本明彦 長田恵美 于天英・張靖 (digital cosmos)


●開幕式
北京市労働人民文化宮大殿で行われた開幕式において
中国人民対外友好協会副会長 蘇光氏の挨拶から

 このたび旧世紀を送り新しい世紀を迎えるにあたり、日本コンピュータ絵画展を開催する運びとなりました。  わたくしは謹んで中国人民対外友好協会を代表しまして、この開幕式におこし下さった日本のアーティストたちをはじめご来賓のみなさまに熱烈に歓迎の意を表し、またディジタル・イメージ様及び今回の展示会に出品されたアーティストたちに衷心よ り祝賀と感謝の意を申しあげます。(略)

 コンピュータとインターネットを核心とするインフォメーションの革命が、蒸気機関と電気の発明と同様に画期的な意味をもっていると考えられています。周知のとお りこの革命は既に世界の生産力を向上させ、人々のライフスタイルを変えました。この革命のもう一つの大きな貢献、つまりコンピュータそのものが視覚アートにもたら してきた衝撃力を本日ここで深く感じました。
 アーティストたちは最先端のハードウエアとソフトウエアをいかして、自分の創造力を自由自在に表現し伝統的方法ではできない芸術的効果をおさめました。コンピュータ技術が伝統芸術の創作に自由に飛びまわれる翼を添えたといえるでしょう。
 ここにわたしはディジタル・イメージと中国中央美術学院ディジタルイメージアトリエのみなさんの、今回の展示へのご協力にお礼を申し上げます。中国で日本のコンピュータ絵画展、3Dアニメーションの上映、および学術討論会などを行なうことは、我が国のデジタルイメージに携わる人たち、とくに数多くの青少年たちにとって勉強と交流のいいチャンスです。

 今回の展示会をとおして科学技術と芸術との結合、我が国のディジタルイメージによる絵画レベルの向上、また中日両国のさらなる友好を増進できるものと確信しております。(略)


●報告1
記念すべき海外進出の第一歩
喜多見康
 
私は昨年末の12月26日〜30日、急遽中国に行ってまいりました。12月28日より 2001年1月6日まで、開催されることになった、「ディジタル・イメージ中国展」の開催準備と式典のためです。

 今回の開催会場は驚くなかれ、由緒ある歴代中国皇帝の住処の一つだった「北京市労働人民文化宮」歴史上の名称は「紫禁城」です。天安門の目の前にあり、明朝の永楽帝が先祖を祭るために1420年に建てた国宝級の建物だそうです。確かに日本では、ちょっとお目にかかれないような会場でした。
 どうして、そのような場所で開催できるようになったかと言えば、主催の中国人民対外友好協会(中国の外国交流のための専門機関)や北京中央美術学院(中国最古の 国立美術大学、日本で言えば東京芸大?)など権威ある団体が懸命に開催努力をして下さったおかげでした。
 そのため公式行事並みの規模の開会式典とプレス広報があり(10数社程の新聞取材とテレビ取材が入ったそうです)、開会式典では、私も舞台の上に並ばされ冷や汗をかきました。

 中国人民対外友好協会でのレセプションパーティーに及んでは、立派で格式のある 雰囲気の応接室に白ナプキンの円卓が用意され、私達日本側メンバーは中日友好協会の理事のおふたり(百戦練磨の外交畑の50代中国人紳士です)と、日中のIT経済事情や中国のインフラ状況などについて、静かに語り合いながら1時間以上会食をするという、非常に貴重な経験をしました。
 予想外だったのは、北京の中心、日本で言ったら丸ノ内か銀座4丁目の角に当たる場所に、東京では見たことないような巨大な、ものすごいファッションビルが建っていて、そこに中国ソニーがオフィスとハイテク博物館をオープンしたばかりで、そこのソニー博物館が今回の中国展の同時開催会場になっていたことです。ソニー博物館ではディジタル・イメージ作家のムービー作品を館内の巨大スクリーンでガンガン流してくれています。非常にびっくりしました。

 どうやら今回の中国展が私達ディジタル・イメージの、記念すべき海外進出の第一歩になったようです。展覧会もセミナーも盛況で、たくさんの中国の人に日本のCGを見て楽しんでもらうことができて、今回の展覧会は日中のCG作家の交流が活発になる、きっかけになりそうでした。


●報告2
「ディジタル新世紀」アジアの時代を迎えて
川口吾妻

初めてアジア圏、文化文明の中心とも言える中国・北京でディジタル・イメージ展を開催した。搬入設営作業のため、実際に北京を訪ね、講演、そして懇親会も行なわれた。

 今回の展覧会では、日本のクリエイターの作品と活動を多くの観覧者、とりわけ若い人達に観てもらうことができた。また同時に、デジタル表現に取り組んでいる中国 の人達との新しい交流を持ち、中国の現状と活気を肌で感じることができた。
 ディジタルという新しい表現分野における展覧会を介しての交流と相互理解は、新しい世紀を迎え、まさに時代の必然性を感じざるをえない。

 多分、中国が核となって動き出すであろう21世紀を迎え、アジア圏という切り口から、今後、日本の作家に求められるディジタルアートの将来像、そして方向性を探ってみたい。


●報告3
過去と未来が同時進行の街、北京
松本明彦

 ディジタル・イメージ中国展に行ってきました。初めての中国は驚く事ばかり。初日、空港からの高速道路入り口ゲートは、例の伝統的な中国式の反った屋根が付いているではありませんか。しかもそこに電光掲示板のサインが・・・。

 北京中心部は東京まっ青の高層建築がズラリ。ビル一つ一つも東京よりずっと巨大で、スケールの大きさを感じさせます。しかし良く見ると、そのビルの門構えや頂上部には、またもや伝統的な中国式の反った屋根が付いているではありませんか。そして道一本入ると、昔ながらの煉瓦積みの平屋が並んでいます。・・・どこか「ブレードランナー」や「アキラ」のような未来都市の香りもあります。
 街にはベンツやアウディ等の最新大型の高級車が走っているかと思えば、日本では見かけなくなった木炭を積んだ三輪自動車や人力車も見られます。これら高級車に乗っているのは、政治家や社会経済主義になってから会社を起こして成功した一部の人達だけだそうです。まだまだ普通のサラリーマンには、車もパソコンも買えません。
 ですからセミナー交流会で拝見した中国人作家の3DフルCGムービーも、「えっ鹿島建設に作らせたらいったい何千万円?」というくらいレベルの高い凄い作品なのですが、実は国策人海戦術の力技で、「じゃ、あなた個人で作ったCG作品は?」と言ったら、ほとんどないのです。

 本屋さんに行けば、もうPhotoShop6.0のハウツー本が山積みになっていますが、開けばなんとザラ紙に白黒印刷なんです。おそらくハードもソフトも世界同時進行で、日本とも時間差はないのですが、個人が家で作品を制作する時間や機材の余裕がなく、サービスとかエンターテイメントとかいった概念もまだまだこれからのようです。
 とはいえ、既にそのポテンシャルは充分! 加えてもともと勤勉な国民性。「眠れる獅子」は起きたら怖いです、いやもう起きてます。セミナー交流会であったCG作家達も皆若く意欲的で、ポジティブでした。

 今回の中国展がきっかけとなり、アジアの隣人として、さらに韓国など他の国も交えて、CGを通して仲良く交流を深めることができれば、と考えます。こんな「アジアの時代」に生まれてきて、我々はとてもラッキーだと思えます。


●報告4
北京メモ
柴田忠男

・12月26日
午後北京着。この日は展示2会場の下見と打ち合わせだけ。

・12月27日
午前10時ごろから労働人民文化宮東配殿での設営。展示する会員作品がA1で105点ある。照明もほぼ同じくらいあるので、照明の下に1点ずつ張り、横型の作品は上下2点掛けとする。特別出品の勝井三雄さん、河口洋一郎さんの作品は正面スペースに飾ってもらうことにした。作品は会場にぴったり(奇蹟的!)おさまった。
 A1の作品105点は、インクジェットで出力、パウチ加工し、上下の余白スペースに4箇所ハトメをつけた。その穴に押しピンを刺して止めるだけという、運搬が楽で展示が容易というアイデアだ。しかもサイズを統一したので、作品をセットする高さや作品の間隔さえきちんと計れば整然と展示が可能だ。展示は午後2時過ぎまでかかる。
 その後はソニー博物館での設営。20枚を内部のガラス壁や、外からも見えるようにガラスの内側から貼った。ビデオテープを博物館スタッフに渡しモニタでチェックする。ソニー博物館はハイテクなイベントが楽しめる施設でわれわれが見ても面白いのだが、普段は60元と非常に高い。年末年始は30元になるという。それでもお客はかなり入っていた。

・12月28日
 午前9時半から中国人民対外友好協会でプレス発表。  その後バスで労働人民文化宮に移動。  大殿にて予想以上に大規模なオープニングセレモニー。お客さんは多数。古式ゆかしい楽器の演奏のあとは日中双方の堂々たる開会の挨拶、テープカット。あまりに晴れがましい。展示会場に行くと大変な人出。若い人が多かったが、くいいるように作品を鑑賞している。この展覧会の成功を実感した。  バスで対外友好協会に戻る。オープニングのレセプションが行われる。お客さんと交流できるのかと思っていたら、別室の円卓で来賓を交えての食事となる。ややかたくるしくもあったが、これも日中友好。その後、会場2階にある貴重なギャラリーを特別に見学を許される。
 対外友好協会から戻り、長田さん、川口さんはホテルで明日のセミナーの準備。喜多見さん、松本さん、柴田は通訳を務めてくれるDICO(青島のデジタルコスモス社)の銭さんとタクシーにぎゅうずめになってなんと1時間、セミナーで使用する器材を貸してくれる会社まで行ってプロジェクタとビデオのチェック。夜は日中経済協会の富田健介さん主催の食事会が、有名な北京宮にて行われる。

・12月29日
 午前中、セミナーに備えて松本さんと喜多見さんは、それぞれ通訳さんとじっくり打ち合わせ。要領よく打ち合わせを前夜に済ませてしまった川口さんと柴田は、DICOのアンさんと3人で故宮博物院に、長田さん一行は動物園にパンダを見にいく。
 午後は対外友好協会の講堂でセミナー。ところが、始まる直前になって張駿・中国中央美術学院電脳美術工作室主任(今回のイベントの最大の功労者)から、一人あたり35分くらいにしてくれ、その後で中国側のコンピュータ音楽とCG作品のプレゼンをやりたいとの提案。われわれは質疑応答をふくめて一人あたり60分くらいを想定して、通訳さんと長時間慎重に打ち合わせをしたのだった。準備が無駄になるが、交流が第一なので、みんなは大いに話を省略してセミナーを終える。
 セミナーの内容は、以下の通り。喜多見:EXIT展で発表したアニメーション8作品の上映と、制作した5人の紹介、CGアニメの現状報告。柴田:日本で流行っているバーチャルビューティについて報告、画像250点を高速スライド上映。
松本:日本のデジタルカメラ事情報告、作品「東京天使シリーズ」の紹介、デジタルカメラ撮影風景(ビデオ上映)紹介。川口:ディジタル手法を用いてデッサンを描く手法と作品を紹介。
 そのあとは作品をプレゼンする制作者たちが続いて、会場では交流の時間はとれなかった。動画作品の質はものすごく高いが、国策CGといってもいいと思う。膨大な時間と人とマシンが動員されなければできないクォリテイだった。半日を要したセミナーの終了後、張先生、若い制作者10人くらいと王府井のレストランで交流した。

・12月30日
 午前中は北京に来て初めての自由時間。各自買い物や散歩に過ごす。川口さん、喜多見さん、松本さん、柴田は正午すぎに空港に向かう。1月2日まで北京に滞在する長田さん一行は、人民文化宮とソニー博物館のチェック。人民文化宮では、中国中央美術学院電脳美術工作室のスタッフが受付を担当、お客さんもかなり入っており、そのうち軍人さんの団体も見に来た、とのこと。


●提 起
2001年のディジタル・イメージ
喜多見康

 ディジタル・イメージ代表の長田さんのスピーチを、歴代の中国皇帝が住まわれた という由緒ある「北京市労働人民文化宮」、歴史上の名で呼ぶなら「紫禁城」の「デ ジタルイメージ中国展」開会式典の舞台の上で聞きながら、10年間CGをやってきて 、いよいよ世界を舞台に私達の出番が回ってきたんだな、という感慨を深くしまし た。

 今回の「ディジタル・イメージ中国展」の会場は国宝級の施設、主催は中国人民対外友好協会(中国の外国との文化交流のための専門機関)と中国中央美術学院(中国で最も伝統のある国立美術大学)というようにたいへん権威ある団体が懸命に開催努力をして下さり、公式行事並みの規模の開会式典とプレス広報がなされました。過分とも言えるような中国の厚遇が、世界が変わってきていることをはっきりと感じさせ ます。
「どうしても、20世紀から21世紀にまたがる会期で、新世紀への架け橋になるような展覧会にしたいと願っていました」という長田さんのスピーチは、私達CG作家を取り巻く社会の大きな変化のうねりを的確にとらえていると感じました。

 10年前、長田さんをはじめCGアーティストの方々のたいへんな努力で生まれたディジタル・イメージでしたが、その当時のディジタル・イメージに対する社会の反応は、現在とは大きく異なっていました。もちろん当時から、CGは新しいグラフィック表現として市場価値があり、また真新しい芸術の表現ジャンルとして期待もされていました。でも、やはり最も大きかった反応は「あんなこともできるんじゃないか、こんなこともできるようになるんじゃないか」という夢を含んだ漠然とした期待感だったと思います。

 この10年間の飛躍的なソフト、ハードの発展、またPC周辺産業の驚異的な拡大は、ある意味で漠然としていた夢を現実的で形のあるものにし、ある面では夢を壊してくれました。CGは、どんなことでもできる近未来のSFのような技術ではなく、近所のパソコンショップで高校生がお小遣いで買える3Dアプリケーションパックのことなのだ、というのがはっきりしたのです。
 そして漠然とした夢が消えた分、社会は急激にCG表現技術に対して、具体的に切迫した要求を持ち始めています。インターネット、多種の新放送メディア、携帯端末の画像配信等によって新世紀、世界は電子情報によって急速に全く新しい形に変化しようとしています。
 そのとき、膨大な量の電子情報が世界を駆け巡ることになりますが、その電子情報が重要な情報であればあるほど、その情報を的確に表現し、情報伝達の目的を果たすようなクォリティの高いCGがともなわなければなりません。

 21世紀が様々なネットワークによる、電子情報の流通によって形作られるということは、議論の余地がないでしょう。だからこそ、その情報を目に見える姿でCGとして表現する(それは、つまり情報に姿形を与えることです)私達CG作家の責任は重大にならざるを得ないのです。新しい世界が電子情報によって形作られるならば、その電子情報に姿形を与える私たちCG作家は、 新しい世界に形を与える「神」にも等しい責任を帯びているのではないでしょうか? 私たち作家が作るCGによって、世界が新しい姿に変わるかもしれないのです。なんと素晴しいことでしょうか。

 21世紀の始めに、歴史と伝統の国、中国が私たちディジタル・イメージのために、これほど素晴しい舞台を用意してくれたのが何よりの証拠です。
 さらに、今度はお隣の韓国ともおつきあいが急に始まり、さらに素晴しい舞台が出来上る可能性が出てきました。また中国、韓国のCG作家と一緒に展覧会や活動をするチャンスも、今年は生まれそうです。

 この10年間、私たちデジタルイメージは着実に活動をして実力をつけ、仲間を増やし、十分な準備をして世界でも稀な、大規模なCG作家の自主運営組織を作ってきました。20世紀の最後の10年間で、準備は完了したということではないでしょうか。

 21世紀はいよいよ世界を舞台に、皆さんが活躍する番です。まずその第一歩が、4月の東京展から始まります。ぜひ全員でトライしましょう。


● ディジタル・イメージ2001東京展」は日中韓3国の国際展に
「ディジタル・イメージ2001東京展」は日中韓3国の作品を展示する国際展に!
長田智行

 21世紀はアジアの世紀だ、といわれて久しいのですが、ディジタル・アートの分野においても、ようやくそのことを実感しています。わたしたちディジタル・イメージは、2000年12月28日から2001年1月6日まで、中国の北京において初の海外展(2会場)を開催し、大きな成功をおさめました。

 わたしたちのこだわりは、海外でやるならまずは中国であること、20世紀から21世紀にまたがる会期で、新世紀への架け橋になるような展覧会にしたいというものでした。そのため、あえて厳寒の北京を選び、中国側の受け入れ機関との度重なる打ち合わせを経て、通常では決定まで半年以上はかかるというのをわずか数週間でクリアするという幸運に恵まれ実現の運びとなりました。
 わたしたちの誰もがこんな早い実現は無理だろうと考えていたのですが、中国側の、とくに中央美術学院の張駿先生の超人的なパワーと、周囲の信じられないような好意と熱意がそれを成し遂げたのです。

 展覧会は盛大なオープニングセレモニーが行われ、報道機関も多数参加し、新聞やテレビで告知がされました。おかげで、初日から大変な入場者を迎え、会期中はたくさんの観客でにぎわいました。
 また、セミナーでは若い人を中心に会場は満員の盛況でした。わたしたちは、中国の多数のクリエイター、アーティストたちの絶え間のないプレゼンテーションを受けとめるため、わたしたちののセミナーの時間を短縮し交流につとめました。

 個人レベルのディジタル・アートのクオリティにおいては、まだ日本に一日の長はあるでしょう。中国では、まだ個人の制作環境が充分に整ってはいないからです。しかし、コンピュータ・グラフィックスの大きなプロジェクトでは日本との差は急速に縮まった、いや同じくらいのレベルに達しているといってもいいかもしれません。
 2008年のオリンピック招致を目指したプレゼンテーションCGなどは、膨大な時間とマシンと人員を要したものと思われますが、そのクオリティはすばらしいものでした。中国では、なにごとにおいても取りかかりは遅いが、取りかかったら驚異的な早さで達成できる、と今回のイベントの開催と運営を支援してくれた中国人民対外友好協会の幹部の方が誇らしげに語っていました。もうすぐ、あとわずかで中国のディジタル・アートは日本と肩を並べるでしょう。

 一方、韓国のディジタル・アート事情ですが、1月始めに「ソウル・ディジタルイラストレーション・アソシエーション」の代表である梁浩一・漢陽大学教授にお会いする機会を得て、韓国のクリエイター、アーティストたちの作品を見ることができました。それらは、日本の作品と見比べてそう差はないようです。韓国の驚くべきところは、インターネット利用者数がまもなく2000万人に届くということです。数字でいえば日本も同程度なのですが、韓国の総人口が4643万人ですから、普及率はなんと41%にもなり、インターネット利用時間と超高速インターネットの使用率で世界1位を記録しています。韓国人のユーザー1人当たりのインターネット利用時間は月平均18.1時間で、2位に香港(12.1)、 3位にアメリカ(10.8)が続いています。
 12月、1月に中国、韓国を訪れて、伸び盛りの両国にたいして日本はIT革命のかけ声だけは大きいものの出遅れているとの観を深くしました。ディジタル・アートの分野においても、「ディジタル・イメージ」のようなアーティスト中心の組織が、韓国にはすでに存在し、北京でもそのような動きがあるとのことです。

 わたしたちは「ディジタル・イメージ中国展」という巨大なイベントに立会い、「21世紀はアジアの時代」をひしひしと感じています。「ディジタル・イメージ」における20世紀最後の10年間の意味するものは、21世紀のアジアの時代に向けての準備期間であったと思い至り、今さらながら深い感慨を覚えます 。

 GWに銀座ワシントンで開催する第11回目の「ディジタル・イメージ展」は、日中韓三国のアーティストによる国際的なイベントになります。中国から20名、韓国から20名、そして日本からは40名が参加する予定です。また、「ソウル・ディジタルイラストレーション・アソシエーション」の代表である梁浩一・漢陽大学教授、張駿・中央美術学院電脳美術工作室主任によるセミナー(それぞれの国におけるディジタル・アートの現状を報告)を開催します。